glay-usagi’s diary

ASDグレーゾーン「うさぎ」の、理解されない人生の記録

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夜な夜なパズル!ー後編ー

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後編は「明日のパズル」についてです。( → 前の記事: 夜な夜なパズル!ー前編ー )

明日のパズルとは「翌日納品分の発注業務」です。あらゆる想像力をフル動員させ、現状のキャンパス地に未来の完成予想図を描いていく時間差パズルです。

このパズルに関しては、思う所が在りすぎて非常に細かい話にまで発展します。そして長いです。多くの人にとっては面白くない話かもしれませんが、それでも書いてみます。

私自身「自分の考え方は多くの面で、他の人とちょっと違うのではないか」と気がついたのはつい最近です。少し前までは、誰もが自分と同じように考えているものだと信じていました。

そのためどこまで伝わるのか、全く自信がありません。しかし、人と違うことこそ書く意味があると思いました。それに私はこういう話を書くのが苦ではないので、少なくとも頭の整理と自己満足には繋がり良いことです。

 

私の発注理論は細かいです。基本的には原則通り、天気、気温、曜日、近隣状況、最近の傾向、値下げや類似商品の価格、ジンクス(?)などのあらゆる経験則に基づいて考えます。

もちろん漏れダブりなく、翌日の売場の最適化が一番の命題です。しかし、それだけでは不十分です。それだけなら誰でもできるし、難易度の低いパズルのままでは面白味がありません

私が発注時に想像する『予想図』とは、現状から翌日売れた商品分を差し引いた状態、つまり翌日の品だし前の売場の状態(A)ではありません。翌日納品分を売り場に並べ終わった「翌日の品だし後の売場の状態(B)です。

その(B)の『最高理想形』をイメージし、そこから(A)を予想して逆算で発注を決めます。パズルの難易度を上げるためには上記の原則に加え、例えば「翌日の品だしする人の性格や癖も考慮していくのです。

 

特に回転の鈍い商品に関しては、翌日シフトに入る人によって発注を調整します。欠品は避けたいので多めに取っておきたいのは山々ですが、敢えてこの人の場合この商品の場合」を個別に判断します。

例えばAさんの場合、この商品だと残数が何個以下なら売場に出すだろうけど、何個以上なら箱のまま棚上に積むだろう… Bさんの場合、この商品なら残数に関わらず丸々売り場に出すだろう… などです。

棚上がプラス1になる可能性がある場合、他の棚上の商品をマイナス1にできる可能性が必要です。正解に数えはしませんが、何となくの『定量イメージ』で棚上の総数を予測調節しています。各商品の「可能性の増減イメージ」をプラマイゼロに合わせておけば、大抵の場合は巧く収まります。

 

欠品を恐れ、大事をとって前倒しで納品させるのは簡単です。しかし、そうも言ってられない理由が2つあるのです。1つはバックヤードがないに等しいため、棚上に収まらない分は倉庫行き』になってしまうこと。

もう1つは、人によっては無理な陳列をしてしまうので、却って売れなくなることです。私は自分の作業中にお客さんが来ると面倒に感じますが、それでも折角売場を作るからには「売りたい」という思いがあります。(出来れば昼間に…)

こちら側の都合で無理に詰め込んだ陳列をしてしまうと、面白いほど売れません。触ったら崩れそうな状態で積んである商品を、わざわざリスクを犯してまで手に取ろうとは思わないのが通常の顧客心理です

 

例えば普段、一日平均5個しか売れない商品でも、残りが10~11個程度になると発注したくなるのが人間心理です。もしかしたらまとめ買いをする人がいるかもしれないし、欠品は避けたいからです。

でも、翌日1つも売れないかもしれません。その場合は納品されても出さなければ良いのですが、人によっては無理矢理詰め込んでしまいます。売場の左右にスペースを作れれば良いのですが、作れないとスペースがない中での陳列になります。

結果、今にも崩れそうな積み方にならざるを得なくなり、そのまた翌日も面白いほど全く売れないのです。とてももったいないです。本来なら前日ゼロだった反動で、翌日は10個売れていたかも知れないのに!

…というのは結果論で少々大袈裟ですが、それでもわざわざ手間と時間を投入して「お客さんに敬遠される売場」を作る意味がわかりません。もしお客さんが取ろうとして崩れ落ちたら欠損品が生まれるだけで、ひとつも良いことがないからです

 

他にも、人によって考慮することは多々あります。大抵の人の発注傾向は把握しているつもりなので、上記の例とは逆に「この人は明日これを発注しないだろうから、明後日のために今日取っておこう」という商品もあります。

完璧にやろうと思うと、考えることは山積みです。ここ最近の傾向は、なぜか「隔週」の週末に酒類がよく売れます。売れなかった週末後は火曜~水曜にかけ、反動なのか平日らしからぬ売れ方をすることに気づきました。

もちろん季節や気温によっても売れる商品が変わります。その辺りは業界の常識の範囲なので、自分でも色々とネットで調べて勉強します。前年の記憶もフル動員します。

 

翌日も自分が入るときは、また別の楽しみがあります。基本的には前日導き出した「予想完成図」案を無心になぞるだけで、丁度ピッタリに収まるはずです。前日の読みがどれだけ的中したのか、その場で答え合わせができます。

週に一日だけ、納品のない日があります。その前日は発注業務がなく、前々日に二日分の発注をします。私は発注のない日はシフトに入っていないので、二日分の発注をして帰った後、一日半が経過した売場を見ることになります。その日が一番ドキドキします。

二日後の完成予想図(B)を完璧に予想して、欠品もなく倉庫行きもゼロ、棚上までで綺麗に収まる発注が出来たときには、本当に気持ちが良いです。更に倉庫までも空っぽにしてしまえたら、もう最高に良い気分です。

 

幾つかの商品は、納品までに「中一日」掛かります。各日の納品量のバランスまでも考慮をすると、なかなかチャレンジングなパズルになります。

明日のパズルは結果の正解さだけが全てです。掛けた時間と売上は比例しません。時間短縮のためには、大きなパズルをしながら頭の中に明日のパズル攻略法の目星を付けておく必要があります。

「大きなパズル」を完成させながら片手間で「小さなパズル」と「数字当てクイズ」をし、更に「明日のパズル」の粗筋を描いておく。全てが完璧に行えると、今日はとても良い仕事ができたと嬉しく思います。

 

 

売場と棚上に収まらない商品は倉庫行き』です。倉庫も非常に狭く、縦長の作りなので出し入れが大変です。一旦倉庫の奥に入ってしまうと、出すだけで一苦労。それに今度は倉庫の管理という「無駄な作業」が増えます。

倉庫の管理は誰もやらないので、結局は私がやります。私が入社したとき、倉庫の状態を見て「これはあり得ない」と呆れました。倉庫の奥に何がどれだけあるのか、誰も正解に把握していなかったのです。

賞味期限の管理は、最終的に私に回って来ます。とてもじゃないけど無理だと思いました。ただでさえ忙しいのに、倉庫の奥から物を引っ張り出すだけで相当な時間が取られます。

それに、倉庫内の積み降ろしで余計な体力も持って行かれます。その時間や体力は本来、売上に関係する売場に費やすのが筋です。私は入社直後から少しずつ、密かに倉庫在庫を減らす計画をはじめました。

 

倉庫の在庫を減らす一番の方法は、日々の発注で倉庫行きの在庫を取らないことです。減らす前に、まずは増やさない。そのためにはやはり「棚上までで収まる最大量」を見極めることが肝心です。

それでも他の人が発注する日もあり、私が読み間違える日もあります。ある商品が入荷されない日が続いた後で一気に入ってくることもあれば、こちらの発注とは無関係に一方的な大量納品があることもあります。

結局は倉庫管理も毎回行うのですが、それでもベースが空っぽならば、どんな状況でもある程度の対応が効きます。イレギュラーで増えた分も、数日で捌いてしまえば良いだけです。

私は常に倉庫の在庫を全て把握して、それを記憶しています。これは自分で触っているからという部分が大きいですが、アスペルガー傾向の記憶力の良さも役に立っていると思います

 

しかしそれでも、倉庫在庫を減らすことは現実的には色々と難しいものです。発注時に倉庫分を減らして入力すれば、少なくとも増えることはないはずなのですが、そう単純にも行きません

翌日の人が倉庫を見ないと、倉庫にある商品が売場に並ぶことはまずありません。しかも「その商品は在庫がない」と思われてしまいます。売場に出さないまではまだ良いのですが、また新たに発注されてしまうのが厄介です。

「欠品するほど売れている」と勘違いされてしまうと、大量に発注されてしまう恐れがあります。それが回転の鈍い商品だと、更に倉庫行きが増える結果に繋がります。

 

棚上の『定量イメージ』がプラスに偏り、なおかつその商品の左右のスペースが確実に取れない場合、倉庫の状況や翌日の人の性格を考えて「敢えて発注しない」決断を下すこともあります。

例えば先ほどの「一日平均5個」の回転が鈍い商品の場合、残りが6~7個でも取らないこともあります。翌日の人が必ず発注する性格であることがわかっているし、さほど売れない商品がたとえ数時間欠品しても大きな損失ではないからです。

逆に残数が少ない方が、却って売れることも多いです。顧客心理的に残りが僅かだと「なくなるかもしれない」というバイアスが掛かり、勝手に『限定商品』のような効果が発動するのかもしれません。私は行動心理学も大好きです。

発注して無理に積むと1個も売れず、発注せずにスカスカにしておくと全部売れる… それなら発注しない勇気も戦略のひとつです。そのためやはり、翌日に入る人の性格や癖まで考慮した発注が必要なのです。

 

本当は棚上には、ケース売りを見込める人気商品を乗せておくのが定石です。しかし翌日の重複発注を防ぐために、敢えて倉庫にある売れない商品を引っ張り出してきて「可視化させておくこともあります。

わざわざ棚上の商品を売れない商品に入れ換えるので、ここでも余計な時間と体力を使います。それでも、倉庫の不良在庫が増えるよりはマシです。「ここはジム!」と思って頑張ります。

…そんな感じで、少しの売上貢献を願いつつ、自分のパズル完成を最大限優先して、私はいつも仕事をしています。大変でとても疲れますが、何だかんだで楽しいです。

もしかしたら他の人は「早く終業時間が来ないかな」と思うのかもしれませんが、私は終業時間が来なければいいのになとよく思います。もっと時間があれば、もっとゆっくり遊べるからです。

それでもやはりとても疲れるので、今以上は遠慮しておこうかな… さて、今夜もパズルで遊んで来ます。今日はどんなパズルを完成させられるのか、とてもワクワクします。

 

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