glay-usagi’s diary

ASDグレーゾーン「うさぎ」の、理解されない人生の記録

20190623192406

師匠のこと

20190829200821

 

今から約4年前のこと。私は人の気持ちが全くわかっていないのではないか…? 師匠と思える人に出会い、生まれてはじめてそう疑問を持ちました。

私は師匠が大好きでした。聞きたいことが山程あったので、顔を見れば捕まえて色々と話をしていました。しかし徐々に、彼との会話に戸惑いを覚えるようになりました。彼の反応が毎回、私の予想だにしない方向に行くのです。

私は師匠が何を考えているのかがさっぱりわからず、あまりの感覚の違いに愕然としました。話せば話すほど、彼のことがわからなくなります。どんなに頑張って考えても、一向に真意が掴めません。

私は人一倍、人の気持ちがわかるという自負を持ってずっと生きてきましたそれなのに、大好きな人の気持ちが全くわからない… 不思議で仕方がありませんでした。彼が物凄く変わり者なのかと思いましたが、周りの人に聞いてもそんな様子は感じられません。

彼は、私なら絶対に言わないように気をつけることを臆面もなく言います。私だったら絶対にこうすると思うことを、平然と違うやり方でやります。会話が全く噛み合わず、話す度に混乱しました。私は彼の真意を図りたくて、ネットや本を読み漁りました。

 

色々と学ぶにつれ、私は段々と自分に違和感を感じるようになりました。言葉で表現するのは難しいのですが、どうも「わかるのにわからない」のです。読むとわかるのです。ちゃんと知っているのです。でも、どこかが違う…

そんなことの繰り返しで、彼とも相変わらずちんぷんかんぷんなやり取りを続けていました。半年くらいしてやっと、何となく原因がわかりはじめました。それが「私は人の気持ちがわからない」という衝撃の事実でした。

私は、目の前の相手のリアルな気持ちが全然わかっていないのではないか?過去の経験から得たデータベースによって導き出されたこの場合はこう思うことが正しいという解答を、目の前の相手に重ねているだけなのではないか

 

私は相手の気分を良くさせるために、常に相手の言動をインプットして、その兆候と顛末をパターン化して蓄積してきました。なので、何となく知識としては持っていたのです。それが「わかるのにわからない」の「わかる」の部分です。

しかしそれはある特定の状況下の、典型的な役割に限り応用が利くものでした。例えば風俗嬢という役割のときに、はじめて会ったお客さんが求めていることなら大体わかります。サービス業の店員という役割のときに、怒っているお客さんの怒りを鎮めることも巧くできます。

役割があれば、どう振る舞えば良いかわかります。プライベートでも、浅い付き合いならそれで十分でした。いつも深い付き合いになる前に『リセット』してしまうので、これまであまりその問題が表面化する機会がありませんでした。( → 参考記事: リセット症候群 )

 

ところが師匠とのやり取りでは、私に役割はありませんでした。ただの私でしかありません。そして私は彼が大好きだったので、彼という人間を知りたいと思いました。役割のない、浅くない付き合いとなると、それはもう生身のやり取りです。私にはどうも、それがわからないらしい…

私が30年以上を費やして集めたデータベースは、彼の前では全く役に立ちませんでした。私は34歳にしてはじめて「人は皆それぞれ感じ方や考え方が違う」と知りました

そんな当たり前のことさえ知らずに、私はパターンを全て駆使すれば人の気持ちがわかると信じて生きてきました。そのために、必死でデータベースを構築してきたのです。

データベースだけでは本当に人とわかり合うことはできないのに、私には目の前の相手の気持ちがどうもわからない」… いま思えば呆れてしまうのですが、この頃はまだその深刻さに全く気づいていませんでした。

その頃、たまたまネットで見たとても参考になる記事を書いていた人のプロフィール欄に、職業『心理カウンセラー』とあったのを見て、私も心理学に興味を持ちました。心理学を学べば、彼の気持ちがわかるかもしれないと思ったのです。それが、私が心理学スクールに通おうと思ったきっかけです。

 

私は本当に師匠が大好きでしたが、結局最後までほとんど理解できないままでした。離婚をする前の元夫の会社の取引先の人だったので、私が退職して以来、もう今後も会うことはないと思います。

それでも彼は、私が自分を知る一番はじめのきっかけを与えてくれた人です。私は高校生の頃に人形になろうと決めてから、ずっとそうして生きてきました。彼と出会って、人形を卒業して人として生きたいと思いました。はじめて本気で人を理解したいと思いました

今でも、彼にはとても感謝しています。彼に出会わなければ、心理学を学ぶこともありませんでした。心理学を学ばなければ、アスペルガーという言葉さえ知らずにいたと思います。今の私がいるのは、彼のおかげです。今でも彼は、私にとっての一番の「師匠」です。

その後、私は心理学を学びはじめます。次の記事へ続きます。( → 続き: 心理学と、うさぎの夢 )

 

( →:【うさぎ年表】での分類:心理学を学びはじめる )